地域によってはコヨミの通り、雪が激しく降り始めていますね。
IMGP0034 / fujikinoko
全国的に漆喰の施工が難しい季節です。
もともと左官工事は水を塗るとも言われる仕事。
漆喰も当然ながら水で石灰を練ったものです。
ですからこの季節、工事で生じたトラブルについて、全国から様々なご相談が寄せられます。
なので、今日もその例をご紹介します。
トラブルその1) 下地養生の不足によるひび割れ
もうすぐ年末。建築工事の追い込みの時期です。左官さんのお仕事は「仕上げ」。最後に漆喰を塗ってキレイに仕上げます。
が、工期の遅延や天候不順などによって、工事日数が足りなくなることが多々あります。
で、間に合わせるために何とかするわけです。
当然、ご本人はゆっくり塗りたいのですが…。
誰かが待ってくれないのですね。
その為に起きてしまうトラブルが「ひび割れ」。
ご相談を聞いていると、原因で最も多いのが
「セメントモルタルを塗って、ちゃんと期間を置けずに漆喰を塗った。」こと。
セメントは水和反応といい、一緒に練った水とセメントが反応することで固まっていきます。
表面の水分が乾いたから、といって固まったとはいえません。じわじわと固まっていくのです。
モノが固まるとどうなるか?
ほとんどのモノは収縮していきます。
セメントモルタルの上に漆喰を塗る場合、暖かい時期でもセメントは最低2週間、何もせず置いておく(これを養生といいます)ことをおすすめしています。
で、養生せずに塗るとどうなるか?
セメントの収縮によって、上に塗った漆喰にひび割れが出来てしまいます。
トラブルその2) 工程短縮?によるひび割れ
次に多いのが「セメントモルタルの上に砂入りの漆喰を塗らなかった」こと。
しっかり養生してもまだ、下地の挙動は収まりません。
また、建物に生じる力が表面の漆喰に伝わります。
漆喰は塗られた時が最も柔らかく、
乾いた後から、空気中の二酸化炭素を吸収しながら硬く硬く固まります。
だから、極力表面に伝わる力が少なくなるよう、砂入りの漆喰(中塗り漆喰)を塗るのです。
つまり、中塗り漆喰が緩衝材となるわけですね。
昔からの左官さんの優れた知恵です。
で、塗らないと?
やっぱり割れやすくなります。
でも、工期短縮のために省かれることがあるようです。
左官さんはしっかり塗りたいはずなのですが…。
トラブルその3) 乾燥条件不良による白化・白華
漆喰は消石灰を練ったもの。消石灰=水酸化カルシウムは全てではありませんが水に溶けています。
冬季や梅雨の多湿時は洗濯物も乾きにくい季節。
当然、漆喰も乾きにくいのです。
では、水をたっぷり含んだまま乾燥条件が悪いとどうなるか?
溶けていたカルシウム分が表面に結晶を作り、白い粉を吹いたような状態になることがあります。
漆喰自体が白いため、分かりにくいこともありますが、なんとなくモヤモヤした仕上がり状態になってしまいます。
ちなみに、「おさえ」が足りずにテカるのも同じカルシウムの作用。
この場合は、ガラス状の結晶が出来てしまうのです。
年末まであとわずか。
左官職人さんは気候と乾燥条件を一生懸命考えながら、少しでも良い仕上がりになるよう、努力を続けていらっしゃいます。
周りの皆様はよくご理解いただき、左官さんを応援してくださいね。