何事も簡単にすればよい、というものでもありませんが…

2016/11/16

日々雑感

まずはこの文章から
「ではみなさん、さういふふうに川だと云はれたり、乳の流れたあとだと云はれたりしてゐた、このぼんやりと白いものが何かご承知ですか。」  先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の圖の、上から下へ白くけぶつた銀河帶のやうなところを指しながら、みんなに問ひをかけました。  カムパネルラが手をあげました。それから四五人手をあげました。ジヨバンニも手をあげようとして、急いでそのままやめました。  たしかにあれがみんな星だと、いつか雜誌で讀んだのでしたが、このごろはジヨバンニはまるで毎日教室でもねむく、本を讀むひまも讀む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないといふ氣持がするのでした。  ところが先生は早くもそれを見附けたのでした。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の冒頭分です。

ちなみに「銀河鉄道の夜」は鉄郎とメーテルではなく、ジョバンニとカムパネルラ。
Galaxy Express 999 (은하철도 999)
Galaxy Express 999 (은하철도 999) / golbenge (골뱅이)


ところで、読めますか?
大半の方は詰まりながらなんとなく読めるんですが、意味が…という感じに。

では現代のかなづかいに変えて、読みやすくしてみましょう。

「では皆さん、そういうふうに川だと言われたり、乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものが何かご承知ですか。」  先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の画の、上から下へ白く煙った銀河帯のようなところを指しながら、みんなに問いをかけました。  カムパネルラが手をあげました。それから四五人手をあげました。ジョバンニも手をあげようとして、急いでそのままやめました。  たしかにあれがみんな星だと、いつか雜誌で読んだのでしたが、このごろはジヨバンニはまるで毎日教室でもねむく、本を読むひまも読む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないという気持ちがするのでした。  ところが先生は早くもそれを見つけたのでした。

ちょっとだけのことなのですが、こうすると読めますね。

1946年11月16日、内閣より現代かなづかい当用漢字表が告示されました。
これにより、今の私たちが読み書きする日本語が表記されるようになったんです。

単純に言えば「日本語が簡単になった」ということですね。
何でも簡単にすれば良いというものでもないと思うのですが…

当時のニッポンでも色々と問題になったことです。
でも、せめて使わないにせよ、読んで意味の分かるニッポンジンでいたいものです。